鮎原は1年生関東大会ベスト8、2年生全国ベスト16と順調に成績を伸ばし、とうとう3年生で宿敵明文を下し、中学で初の全国制覇を成し遂げる。
闘いの後、明文の監督が今まで鮎原に行った妨害行為、「ぶっ潰す」発言などが明るみになり部員に総スカンを喰らい退任。
次期監督として、小学校のクラブチームの監督が就任する。
そして鮎原は高校の進路に悩んでいた…。
チームワークを極め、全国も制覇した。
もう思い残す事はない。
初心に帰るなら昔からの仲間が待っている明文高校に進学するのが妥当である。
実際小学校時代の仲間達は「一緒にやろう」と言ってくれていた。
しかし悩んでいた。いまいち思い切れないでいた…。
今の自分が全国で最も高いレベルのチームメイトで構成された明文高校に入ればもう向かう所敵なしであろう。
それじゃあつまらない…。
横綱相撲は好きじゃない。
ギリギリの闘いが私をもっともっと強くしてくれる…。
最高のチームメイトに甘んじていると弱くなってしまいそうだ…。
鮎原は決心した。
小学校の頃からの友達—鮎原にとって唯一の友達であった—明文中学キャプテン、早川葵に電話をした。
「早川さん。あなたと一緒にプレイする事は出来ないわ。」
『なぜ…?ずっと楽しみにしてたのに…一体何が不満だと言うの?』
「不満なんてないわ。あなたは最高のレシーバーであり、特にサーブなんか今すぐ高校バレー界でもトップにのしあがれる程の実力。あなたが私の後ろにいれば私はどんなに安心してスパイクを打てる事か!」
『じゃあなんで…!?』
「あなたと私が一緒にいたら敵なんていなくなってしまうじゃない。
私はいつでも上を目指していたいの…。」
『そう…分かったわ…また敵同士…
大学へ行っても…企業に入っても…きっと、ずっと敵なのね…。』
「ううん。一つだけ、私達が一緒にプレイできる所があるわ。」
『え…?』
「全日本よ…!!」
『…!!』
「私達の、小学校の時からの夢よ。」
『うん…!行くわ!なるわ、私…全日本の選手に…!』
「ええ!私もよ…!それじゃあ、また、試合会場で会いましょう。」
『ええ、また、試合会場で……!』
鮎原は受話器を置いた。
そして、これから始まる新たな闘いのステージを想い、胸を躍らせるのであった…。
【完】
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
おまけ【鮎原3年後】