タロウは、受験勉強で疲れきっているノリコのためにクリスマスを祝ってやる事にした。
とはいえ、何をしたらいいんだろう。
子供の頃のクリスマスを思い出してみる。
プレゼントとケーキか。
よし、プレゼントをあげて、ケーキを食わしてやろう。
タロウは思った。
しかし、「クリスマスを祝ってやるから家に来い」と言うのも恥ずかしい。
顔から火が出そうだ。ていうか反吐が出そうだ。
タロウは考えた。
どうせなら何にも教えないで当日驚かせてやるか。
ノリコならクリスマスに何もしない、と言っても絶対に家にプレゼントを渡しにやって来るだろう。
そん時に「上がれ」と言えばいいだろう。
いつもノリコには心臓に悪い程驚かされてるからな、たまには俺が驚かせてやろう。
作戦は決まった。問題はプレゼントだ。
俺は今まで人にプレゼントを渡した事がない。
自分が貰っていた誕生日やクリスマスのプレゼントはいつもバットとグローブだった。
しかしノリコは野球をしない...。
なんだろう.......。
何をあげればいいんだ?
考えても分からない。
じゃあ姉ちゃんに聞くか。
タロウは姉の部屋に行き教えを乞う事にした。
姉「プレゼント?
っていうかあんた付き合ってる子いたの?」
そういえばそんな話を姉にした事はなかった。
タロウは「一応」と言っておいた。
姉「色気づきやがって....」
姉に恋人はいなかった。
タロウ「で、どんなモンあげたらいいんだ?」
タロウは聞いた。
姉「そりゃやっぱアクセサリーとかじゃないの?」
実は姉もそういう事には疎かった。
タロウ「アクセサリー?中学生だぞ。」
姉「さあ?でも私の友達とかはティファニーの指輪がどうとか言ってるわよ。」
タロウは参考にならないな、と思った。
とりあえず質問の形を変えてみる事にした。
タロウ「じゃあ、どんなのもらうと嬉しいんだ?」
姉「う〜ん?やっぱ身に付けてられるものがいいんじゃないの?」
なるほど、タロウはメモする事にした。
タロウ「あんがと」
タロウは姉の部屋を後にした。
「身に付けられるもの」
タロウは考えた。
アクセサリーと言えば指輪やネックレスだろうが、そんなのもは学校にして行けない。
受験シーズンまっただ中で休みの日にデートをするわけでもない。
もとより二人はあまりデートというものをして来なかった。
アクセサリーはあまりノリコには需要のない物だし自分もそういう貴金属を纏っている人は好きじゃない。
もっと実用的で、学校でも身に付けられるもの...。
まっ先に思い浮かんだのは髪を結わくゴム。
ノリコはいつも二つに髪を結っている。
これなら学校でも毎日使える。実用的だ。
しかし校則でゴムの色は「黒、紺、茶」と決まっている。
なにか飾りのついた物ならまだしも、そんな地味な物をプレゼントにするのはいかがなものか。
分からない。
だいたい今
行ってから選べばいいか。
ちょうどイブの前日、23日は野球の練習もない完全な休日だ。
ノリコはイブの夜に来るだろう。サンタさんのつもりで…。
うちに煙突はないから来るとしたら....窓かな。
23日にプレゼントを買って、24日の午前と午後でケーキを作って、部屋を掃除しよう。
スムーズに行けば5時くらいまでには終わらせられるはずだ。
ノリコは何時頃来るつもりだろう。
まさか寝てる所に侵入して枕元に置いて行くなんて事は....しない
いや、するかな。あいつのことだから...。
きっとあいつのことだから俺がいつも寝る時間も調査済みなんだろう。
俺はいつも9時に寝る。人間早寝早起きが一番だ。
とすると、来るのは10時くらいか。
オッケー。余裕だ。
タロウは23日デパートに行く事にした。